はじめに
第1回AIプロンプトグランプリでの入選を通じて学んだことは、「プロンプトは技術であり、アートでもある」ということです。
この記事では、私が実務で実践している5つの原則をご紹介します。
原則1: 役割(Role)を明確にする
AIに何者として振る舞ってほしいかを明確に指示します。
悪い例:
「マーケティング戦略を考えて」
良い例:
「あなたは中小企業向けのマーケティングコンサルタントです。予算が限られたクライアントに対して、費用対効果の高い戦略を提案してください」
役割を与えることで、AIの回答の方向性が大きく変わります。
原則2: コンテキスト(Context)を提供する
背景情報を詳しく伝えることで、より適切な回答が得られます。
- 業界・業種
- 対象者(誰のための回答か)
- 制約条件(予算、期間など)
- 現状の課題
特に日本企業の場合、「稟議が必要」「上司の承認が必要」といった組織文化も伝えると、より実践的な提案になります。
原則3: タスクを分解する
複雑な依頼は、ステップに分けて指示します。
悪い例:
「新製品のマーケティング計画を作って」
良い例:
「以下のステップで新製品のマーケティング計画を作成してください:
1. ターゲット顧客の分析
2. 競合製品の調査
3. 差別化ポイントの抽出
4. 具体的な施策の提案
5. 予算配分案」
原則4: 出力形式を指定する
どのような形で回答がほしいか、明確に伝えます。
- 箇条書き / 表形式 / 段落形式
- 文字数の目安
- 専門用語の使用レベル
- 具体例の有無
例:「初心者でもわかるように、専門用語は使わず、具体例を交えて300字程度で説明してください」
原則5: 反復と改善
一度の指示で完璧な回答が得られるとは限りません。対話を重ねて改善します。
改善プロセス例:
1. 初回の回答を得る
2. 「もっと具体的に」「別の角度から」と追加指示
3. 「これを表形式にまとめて」と形式を変更
4. 最終的に実務で使える形に
実務での応用例
私が福祉施設向けAIチャットボットを開発した際の実例をご紹介します。
課題
高齢者の利用者からの問い合わせに、優しく丁寧に応答するチャットボットを作りたい。
設計したプロンプト
「あなたは福祉施設のベテラン職員です。高齢者の方からの質問に答えます。以下の点に注意してください:
- 敬語を使い、丁寧な言葉遣いで
- 専門用語は使わず、わかりやすく
- 聞き間違いや曖昧な質問にも優しく対応
- 必要に応じて確認の質問をする
- 回答は3文以内で簡潔に」
この設計により、利用者から「本当の人と話しているみたい」という評価をいただきました。
まとめ
プロンプトエンジニアリングは、AIと人間の「通訳」のような仕事です。AIの可能性を最大限に引き出すには、技術的な知識だけでなく、コミュニケーション能力も必要です。
5つの原則を意識することで、誰でもAIをより効果的に活用できるようになります。