「他の自治体ではAIをどう使っているのか」——全国の自治体担当者から最も多く聞かれる質問です。
2025年末時点で、全国の自治体のうち約32%が生成AIを何らかの業務に活用しています。しかし成功事例が広く共有されないため、先進自治体と後発自治体の格差が広がり続けています。
この記事では、実際の数字・具体的な業務・導入の経緯まで踏み込んだ5つの先進事例を紹介します。「どんな自治体が」「何に使って」「どれだけの効果が出たか」を具体的に解説します。
日本の自治体AI活用の現状
まず全体像を把握しておきましょう。
| 指標 | 数値 | 補足 |
|---|---|---|
| 生成AI活用率 | 約32% | 2025年末時点 |
| AI安全利用ガイドライン策定率 | 約36% | 活用自治体でも未策定が多い |
| 最も多い活用業務 | 文書作成・議事録 | 定型業務から入るケースが多数 |
| 導入の最大障壁 | セキュリティ懸念・予算 | ガイドライン整備で多くが解消 |
ガイドライン策定率が活用率よりも低い(32% vs 36%)という事実は、「ルールなきAI活用」が一部で起きていることを示しています。先進事例の多くは、ガイドライン整備を先行させてから活用を拡大するアプローチをとっています。
事例1:当別町(北海道)——議事録作成時間を50%削減
北海道当別町は、人口約1万5千人の小規模自治体でありながら、生成AI活用で全国から注目を集める先進事例です。
導入の背景:職員の高齢化と人員削減が続く中、定型業務の効率化が急務でした。特に議会・委員会の議事録作成は専任担当者が半日〜1日がかりで行う重作業でした。
取り組み内容:
- 会議の音声をAI音声認識ツールで文字起こし
- 生成AIで決定事項・発言者・課題を構造化
- 担当者が確認・修正して完成(最終確認のみ人間が担当)
効果:議事録作成時間を従来比50%削減。削減された時間を住民対応・政策立案に充当。小規模自治体でも専任IT人材なしに導入できたことが広く注目されました。
「最初は半信半疑でしたが、実際に使ってみると精度の高さに驚きました。職員の残業削減にも直接つながっています。」
— 当別町 担当者コメント(報道より)
事例2:湖西市(静岡県)——月100時間の業務時間を削減
静岡県湖西市では、生成AIの全庁導入により月あたり100時間以上の業務時間削減を実現しています。
導入の背景:DX推進計画の一環として、まず試験的に数課でChatGPT活用を開始。効果を確認した後、全庁への横展開を決定しました。
活用業務(主なもの):
- 市民向け広報文・お知らせ文の文案作成
- 条例・要綱の要約・わかりやすい解説の作成
- 議会答弁書のたたき台作成
- 英語・やさしい日本語への翻訳・言い換え
成功の鍵:導入時に「AI利用ガイドライン」を策定し、「入力してよい情報・してはいけない情報」を明確化。これにより職員が安心してAIを使える環境を作りました。
事例3:神戸市——職員の80%が効果を実感
政令指定都市の中でも先進的なAI活用を進めてきた神戸市では、生成AI活用の職員アンケートで80%以上が「業務に効果あり」と回答しています。
神戸市のアプローチの特徴:
- 段階的導入:まず一部部署で試験導入し、成功事例を庁内共有
- 研修の充実:全職員向けのリテラシー研修を実施。「使えない」ではなく「使い方を知らない」問題を解消
- ユースケース共有:各部署の活用事例をイントラネットで共有。他部署が参考にできる仕組みを構築
主な活用業務:文書作成(条例・計画・広報)、データ分析の補助、市民対応FAQの整備、政策比較・情報収集。
神戸市の事例が示すのは、「技術より文化」の重要性です。AIツールの導入よりも、職員が積極的に使えるよう教育・環境整備に投資したことが高い効果実感につながっています。
事例4:横須賀市(神奈川県)——全国屈指のAI先進自治体
横須賀市は、2023年から生成AI活用に積極的に取り組む全国屈指の先進自治体として知られています。
横須賀市の先進的な取り組み:
- ChatGPT・Bingチャットの業務利用を早期に解禁(ガイドライン整備後)
- 住民向けAI問い合わせ対応の実証実験
- AI活用事例集を公開し、他自治体への情報提供も積極化
- 職員のAIリテラシー研修を継続的に実施
注目点:横須賀市の最大の特徴は「透明性」です。活用状況・課題・効果を積極的に外部発信することで、全国の自治体の参考モデルになっています。「使う」だけでなく「学んで共有する」姿勢が、AI活用のさらなる深化を促しています。
事例5:泉大津市(大阪府)——AI活用で約3,800万円のコスト削減
大阪府泉大津市では、AI・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせた業務自動化により、年間約3,800万円相当のコスト削減を実現しています。
取り組みの概要:
- 住民票・各種証明書の申請処理の自動化
- 給付金業務のデータ確認・照合作業の自動化
- 生成AIによる市民からの問い合わせへの一次対応
- 職員の研修・マニュアル整備のAI支援
注目点:泉大津市の事例が示すのは、AI単体だけでなく既存のDXツール(RPA等)との組み合わせが大きな効果を生むということです。また首長のリーダーシップが強く、「DXしないことのコスト」を明確に意識した意思決定が素早い導入を可能にしました。
先進自治体に共通する3つのポイント
5つの事例を横断して見えてくる共通点があります。
ポイント1:ガイドライン整備を先行させる
すべての先進事例で、「AI安全利用ガイドライン」の整備がAI活用の前提になっています。「何を入力していいか」「どんな出力物をそのまま使ってよいか」というルールが明確だからこそ、職員が安心して使えます。
ポイント2:定型業務から小さく始める
いきなり複雑な業務や住民向けシステムから始めた自治体は少ない。「議事録」「広報文案」「FAQ」といった定型業務からスタートし、成功体験を積んだ後に活用範囲を広げています。
ポイント3:全職員研修で「使える人」を増やす
ツール導入だけでなく、全職員向けのリテラシー研修を早期に実施している自治体が高い効果を出しています。「一部の担当者だけが使える」状態では、組織的な効果は生まれません。
まだ動けていない自治体へ
全国の自治体の約68%は、まだ生成AIを活用していません。しかし「やらない理由」として挙げられることの多くは、すでに先進自治体が解決しています。
| よくある懸念 | 先進自治体の解決策 |
|---|---|
| 「情報漏洩が心配」 | 利用ガイドラインで入力情報を制限。個人情報・機密情報の入力禁止を明確化 |
| 「予算がない」 | 随意契約上限内で開始。DIGIDEN補助金・都道府県DX補助金を活用 |
| 「職員が使えない」 | 半日研修だけで日常業務に使えるレベルに。理論不要・実務直結の研修設計 |
| 「効果があるかわからない」 | 議事録作成など効果測定しやすい業務から開始。数字で効果を可視化 |
「うちの規模では無理」「人材がいない」と感じている自治体ほど、当別町のような小規模自治体の成功事例が参考になります。専任IT人材がいなくても、外部のサポートを使えば導入できます。
KASAKUの自治体向けサポート
KASAKUでは、自治体のAI活用を「ガイドライン整備から職員研修まで」ワンストップで支援します。随意契約の上限額(100万円)に収まる設計で、複雑な調達手続きなく導入できます。
「まず話を聞きたい」「他の自治体の事例をもっと詳しく知りたい」という段階からご相談ください。お問い合わせフォームよりご連絡いただければ、担当者からご連絡します。