はじめに
ChatGPTをはじめとする生成AIの業務利用が急速に拡大する中、適切な理解と対策なしに利用すると、重大なリスクに直面する可能性があります。2025年現在、情報漏洩、著作権侵害、誤情報の拡散、サイバー攻撃への悪用など、多様なリスクが報告されています。
本記事では、企業が陥りやすい5つの落とし穴と、その対策方法について詳しく解説します。
NG事例①:無料版に機密情報を入力
ChatGPTの危険性として最も深刻なのは、情報漏洩・プライバシー侵害です。特に無料版ChatGPTを利用して機密情報を入力するケースが問題となっています。
実際の失敗事例
M&Aに関する情報について、企業の担当者が個人アカウントの無料版ChatGPTを使い情報入力を行いリスクの分析を行ったところ、この情報がAIの学習に利用され、企業としての情報漏洩リスクを発生させてしまったケースがあります。
なぜ危険なのか
OpenAIの利用規約では、無料版のChatGPTに入力された情報は、AIの学習データとして利用される可能性があることが明記されています。つまり、入力した機密情報が他のユーザーの回答に含まれる可能性があるのです。
対策方法
- 有料版を利用する: ChatGPT Plus、Team、Enterpriseではデータの学習利用をオプトアウト可能
- 機密情報は絶対に入力しない: 顧客情報、社内機密、個人情報などは入力を避ける
- 社内ガイドラインを策定する: 何を入力して良いか明確なルールを設ける
NG事例②:著作権のある内容をそのまま公開
ChatGPTに著作権のあるコンテンツを入力して公開することは、著作権侵害となり得ます。
典型的な失敗パターン
ChatGPTに生成させたブログ記事をそのまま公開したところ、内容が他社のコラム記事と酷似しており、著作権侵害であるとの指摘を受けた事例があります。
法的リスクの理解
ChatGPTはインターネット上の情報をもとに回答を生成します。そのため、ChatGPTでの生成物を利用する場合は、他者の著作権を侵害していないかの確認が必要です。生成物を公開するすべてのシーンで著作権侵害となるリスクがあると考えられます。
対策方法
- 必ず人間が最終チェック: AIの生成物を「たたき台」として扱う
- 専門家によるレビュー: 商用利用前に法務チェックを実施
- オリジナリティの確保: 大幅な加筆修正を加える
- 引用の適切な処理: 他の著作物を参考にする際は引用のルールを遵守
NG事例③:誤情報をそのまま信じて拡散
ChatGPTにはハルシネーション(幻覚)という問題があり、AIが創作した内容を事実情報かのように回答してしまうことがあります。
企業への影響
誤情報を拡散してしまうと、企業の信頼性が大きく損なわれるだけでなく、場合によっては法的責任を問われる可能性もあります。
対策方法
- 必ず一次情報源を確認: ChatGPTの回答は「参考情報」として扱う
- 専門家による検証: 専門的な分野の情報は、その分野の専門家に確認
- 複数の情報源と照合: 重要な情報は複数のソースで確認する
- 社外発信前のダブルチェック: 特に顧客や一般向けの情報は慎重に
NG事例④:商標や特許を無断で使用
企業や団体が所有する商標や特許などを無断でChatGPTに入力して生成物を公開することは、商標権や特許権などの侵害となり得ます。
画像生成での問題
画像内にブランドロゴやキャラクターが無断で使用されるケースがあり、企業側はブランド価値保護のため監視や法的措置を強化しています。
対策方法
- 事前の権利確認: 商用利用前に商標・特許の侵害がないか確認
- ブランド名の使用制限: 他社のブランド名やロゴを含む指示は避ける
- 法的リスクの評価: 「技術的に可能」と「法的に問題ない」は別物
NG事例⑤:セキュリティ対策なしでの外部ツール連携
ChatGPTと連携する外部ツールが攻撃対象となることで、間接的に機密情報が漏洩するリスクもあるため、利用時には十分なセキュリティ対策が必要です。
サイバー攻撃への悪用リスク
ChatGPTはフィッシングメールや不正なコードの生成など、本来の意図とは異なる使い方をされるケースがあります。OpenAIでは悪質なプロンプトへの対応策を講じていますが、巧妙な指示によって制限を回避される可能性もゼロではありません。
対策方法
- アクセス制限の設定: 必要な人員だけに利用を限定
- ログ監視の実施: 不審な使用パターンを検出
- 定期的なセキュリティ監査: システム全体の脆弱性チェック
- 外部ツール連携の慎重な評価: セキュリティ要件を満たすか確認
正しい使い方のポイント
ChatGPTを安全に業務利用するためには、以下のポイントが重要です:
- 有料プラン(Team、Enterprise)の利用 - データの学習利用をオプトアウト
- 機密情報は入力しない - 顧客情報、社内機密、個人情報は厳禁
- 生成物は必ず確認・検証する - ハルシネーションの可能性を考慮
- 著作権・商標権に配慮する - 法的リスクを最小化
- 社内ガイドラインの策定 - 明確な利用ルールを設ける
- 定期的な従業員教育 - リスクと正しい使い方を周知
まとめ
ChatGPTは強力なツールですが、万能ではありません。特に重要なのは、ChatGPTの生成物を「たたき台」として扱い、必ず人間が最終チェックを行うという姿勢です。
人間の判断と責任を前提とした適切な利用が、リスクを最小化しながら効果を最大化する鍵となります。2025年現在、多くの企業がAI活用を進める中、正しい知識と適切な対策を講じることで、安全かつ効果的な業務利用が実現できます。